重度歯周病に対応する「歯周組織再生療法」
歯周病は重度になると、歯肉や歯を支える土台となる骨などの組織が破壊され、歯がグラグラしてきます。歯周病は進行を止めることはできても、そのままにしておいて骨が復活することはありません。そのため、大切な歯を抜歯せざるを得なくなる場合も少なくないのです。
歯周病が進行してしまったとはいえ、できる限り抜歯をしたくないという方には歯周組織再生療法という治療方法があります。歯周組織再生療法は、歯周病によって破壊されてしまった組織をよみがえらせる治療方法です。
治療によって歯周ポケットの改善や、骨を回復させるといった効果が見込まれます。インプラント治療を行いたいけれども骨量が足りないという方や、その後の口腔ケアに心配がある方にも適応される治療方法で、多くの患者様の希望が叶えられるため評価が高まっています。
重度歯周病に対応する「歯周組織再生療法」
日本人が歯を失う原因の約4割が重度歯周病であることはご存知でしょうか。歯周病は症状に気づかないうちに進行していることも多く、とても身近な病気です。初期の歯周病の場合は歯周基本治療という治療を行います。プラークや歯石の除去を行い、毎日の歯磨きや定期的なメインテナンスといったプラークコントロールによってお口の中を清潔にすることで治療する方法です。
しかし、進行してしまい重度の歯周病になると、歯周基本治療のみでの回復は難しい状態となっているため、歯周組織再生療法が必要となります。当院では適切な診断に基づいた丁寧な治療により、抜歯しなければならないといわれるような歯を沢山守ってまいりました。
重度歯周病の自覚症状
- 歯が浮いた感じがする
- 歯がグラグラする
- 痛くてかむことが出来ない
- 歯肉から出血する
- 歯肉から膿が出る・膿の味がする
- 口臭が強い
当院の歯周組織再生療法
エムドゲイン
エムドゲインとは豚の歯胚組織から抽出したタンパクを歯の根の表面に塗布することで、歯が生えてくるときと同じ状態を作り上げ、歯周組織がよみがえることを促す歯周組織再生療法です。
エムドゲインによって歯を支える骨や歯根膜が回復し、退縮した歯肉も回復するため、歯が長く見えるようになってしまったというような審美的な問題も改善が見込めます。
歯周病治療の先進国スウェーデンで開発され、日本でも厚生労働省の認可を受けた安全性の高い治療方法です。
ただし、保険適用外の自費診療であり、どんな歯にも適応というわけではありませんので治療可能かどうかは歯科医師の判断によります。当院までお気軽にご相談ください。
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メリット
- 歯を抜かずに、自分自身の歯を使い続けることができる
- 合併症を誘発するリスクが少ない
- 50~90%の骨を再生することが出来て、歯周ポケットを浅くすることが出来る
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デメリット
- 全ての症例においても適用できるわけではない
- 全ての骨を再生できるわけではなく、個人差がある
- 骨の再生にはある程度の時間もかかる
リグロス
リグロスは皮膚の再生治療などにも用いられている厚生労働省の認可を受けた歯周組織再生療法に使われる製品です。
リグロスは主に「bFGF」という骨や筋肉などの細胞の増殖を促し成長させるタンパク質でできています。
またリグロス内には血管を新たに作る作用も含まれているので、骨や歯ぐきといった歯周組織の再生が可能です。
保険適用の治療が可能で、費用を抑えて歯周組織再生療法を受けることができます。ただし、人工骨を混ぜることができないなど保険適用内で治療するためには条件があります。
また、細胞を増殖する作用があるため口腔がんの既往がある方には適応できません。その場合は、歯科医師の判断により他の治療方法をおすすめさせていただきます。
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メリット
- 歯を抜かずに、自分自身の歯を使い続けることができる
- 歯周病の進行を食い止めることが出来る
- 保険適用で治療が出来る
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デメリット
- 癌の既往歴がある方は治療に適さない
- 治療後の腫れや痛みが一時的に出る場合がある
- 準備治療の期間が長い
フラップ手術
フラップ手術は歯周基本治療で歯周病が改善できなかった場合に、歯周ポケットが深い部位を切開し、とりきることができなかったプラークや歯石などを除去する外科処置です。
歯ぐきを切ることで感覚のみで清掃していた部分を、プラークや歯石を直接見ながら除去できるので歯の根が複雑な形状の場合でもしっかり取りきる処置ができます。
外科処置といっても大掛かりなものではないので、局所麻酔を行い短時間で処置が行われます。そのため患者様の負担は少なくすみます。フラップ手術を行う際、プラークや歯石除去後に歯周組織再生療法を行うことも可能です。
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メリット
- 歯周ポケットの深い汚れを隅々まで除去することが可能
- 歯周ポケットが浅くなり、歯肉が腫れにくくなる
- 歯肉の中に歯石が溜まりにくくなる
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デメリット
- 歯肉を切開する必要があるので、傷が治るのに時間がかかる
- 一時的に痛みを伴う場合がある
- 知覚過敏が起こる場合もある
CTG(結合組織移植術)
CTGとは、歯ぐきが足りない部分に上顎の口蓋から切り取った上皮と結合組織を移植する治療方法です。高度な技術が必要ですが、結合組織まで採取するので移植後も歯ぐきの色が自然なのが特徴です。
歯の根が露出して知覚過敏が起こっている部分などに行う治療方法で、知覚過敏だけではなく審美的な改善も可能です。歯ぐきが足りないためにインプラントが行えないという場合にも応用ができるので、さまざまな場面で活躍しています。移植後は普段のブラッシングなど口腔ケアがしやすくなり、歯やインプラントも安定させることができます。
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メリット
- 局所麻酔をするので術中の痛みは少ない
- 術後の周りの歯肉の色になじみやすい
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デメリット
- 個人差はあるが、術後に一時的に貼れと痛みが出る場合がある
- FGGに比べて、手術には多少高度な技術を要する
FGG(遊離歯肉移植術)
FGGとは、歯周病や強いブラッシングなどによって下がってしまった歯ぐきを、自分の上顎の口蓋から上皮ごと歯肉を採取し補う治療方法です。
歯ぐきが足りずインプラントに心配がある場合も、移植手術を行うことでインプラントの長期的な安定が見込めます。CTG(結合組織移植術)と比べると上皮部分のみなので比較的簡単な手術です。そのため手術時間も短く患者様の負担も軽いでしょう。
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メリット
- 局所麻酔をするので術中の痛みは少ない
- 手術時間が短い
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デメリット
- 個人差はあるが、術後に一時的に貼れと痛みが出る場合がある
- 移植した場合は歯茎の色味が異なるので、見た目を重視する場合には進めない
術前・術後の注意
- 術前
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- 食事は手術の二時間前までに軽く済ませてください。
- 必ず手術前に丁寧なブラッシングを行い、清潔な状態でご来院ください。
- 化粧やアクセサリーの着用は避け、楽な服装をなさってください。
- 煙草は術後経過に影響するため、術前2週間は必ず禁煙してください。
- 術後
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- 術部の反対側を使い、術後1週間はやわらかい食事をとってください。
- 刺激物のあるお食事はお控えください。
- 食後は処方されるうがい薬を使用してください。
- ブラッシングでは、歯科医師の指示があるまで術部に歯ブラシを当てないようにしてください。
- 手術当日はお風呂に入らずシャワー程度でとどめてください。
- 煙草は術後8週間、必ず控えてください。
- 激しい痛みや発熱などがある場合は早めに当院までご相談ください。
重度歯周病にならないために
歯周病の治療が終わった時点で、お口の中の歯周病菌は減少し、口内環境は整っているはずです。しかし、数か月メンテナンスを怠れば、すぐにまた再発する可能性があります。
日々の適切なブラッシングと、定期的なメンテナンスは歯周病再発防止には絶対に欠かせないものなのです。
残念ながら治療の終了を境に、また歯科医院から足が遠ざかってしまう方も数多くいらっしゃいます。しかし、当面の大きなリスクを回避しただけで、リスクがゼロになった訳ではないことを認識し、再発防止に前向きに取り組みましょう。